
ステイゴールドという大先輩がいた。
重賞未勝利ながら何度もGⅠに挑戦しながら4度も2着になり
「シルバーコレクター」といわれ続けた。
それを引退前の最後に海外重賞、海外GⅠを50戦目で勝利を飾った。
有終の美を飾った馬。
同期のドリームパスポートともよく話していた。
あいつは皐月賞、菊花賞、そしてディープインパクトが勝ったジャパンカップで2着になった。
特にジャパンカップは一頭次元が違った。
あいつがいなければ勝っていたのに。
そんな事も話した。
俺も朝日杯、マイルチャンピオンシップで2着。
GⅠというのは出走する事ですら難しい。
掲示板に乗れば狂喜乱舞、勝ち負け(2着)となればかなりの偉業だ。
だけど、勝ち馬とは圧倒的な評価の差が有る。
ステイゴールドに続きたい。
ドリームパスポートとは同じ合言葉でしのぎを削った。
そんな想いを抱えた毎日王冠で、俺はついにやった。
ほとんどGⅠと同レベルと言われるこのレースで、
一緒に走ったドリームパスポートは着外に沈んだ。
天皇賞・秋ではそのウオッカが制した。
その後だった。
ドリームパスポートが引退した事を聞いたのは。
故障らしい。
乗馬になったそうだ。
この世界、競馬を走らなくなったら生きる事すら難しい。
もっといい乗馬が現れたら処分される事だってあるかもしれない。
果たして10年後、あいつは生きているのだろうか。
あいつはステイゴールドにはなれなかった。
…俺がお前の分も走るぞ。
否応なしに力が入った。
そしてGⅠマイルチャンピオンシップを迎えた。
ここでは実力上位だった。
お客さんも俺を一番人気に支持してくれた。
レースは平凡だった。
平均ペースで淀みなく進み、どの馬も実力を発揮できる展開。
となれば、実力で勝る馬が有利。
勝てる…。
俺は大外から先頭に立った。
見てるかドリームパスポート。
これが俺たちが追い求めた栄光のゴールだ。
しかしゴール前、それが起こった。
内から黒い影が俺を追い詰めていく。
何故だ?誰だ?どうしてだ?
相手は牝馬。
またしても2着に俺は負けた。
この世界、馬が「生きる」のは難しい。
このまま勝てなければ俺もいつ淘汰されるかわからない。
だけど俺には落ち込んでる暇はない。
今回の結果に悲観もしていない。
あいつはステイゴールドにはなれなかった。
だけど俺はまだ26回もチャンスがある。
ステイゴールドは50戦目でGⅠを勝ったのだから。
今回は枠順に泣いただけだ。
次回こそゴールドを取る。
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by 健
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